喉を通り抜ける瞬間の「冷徹なまでのキレ」と「スッキリとした爽快感」。このラガー特有の快感が生じるプロセスには、高度な微生物制御と物理化学的な熟成の科学が存在します。
下面発酵の醸造工程は、主発酵と後発酵(貯蔵・ラガリング)の二段階に厳格に分かれています。まず5〜10℃の主発酵で約1週間から10日をかけて麦汁の糖分を発酵させた後、未熟なビール(若ビール)を0℃前後の極低温タンクへと移送し、数週間から数ヶ月にわたって「貯蔵熟成」させます。
この極低温貯蔵期間中、ビール内部では3つの劇的な変化が進行します。第一に、ビール中に浮遊していた酵母や過剰なタンパク質、ポリフェノールなどの濁り成分が重力によって完全に沈降し、透き通った液色が完成します。第二に、若ビール特有の未成熟な不快臭(ダイアセチルなどの未熟臭)が酵母によって再吸収・代謝され、雑味が完全に消滅します。第三に、発酵によって発生した炭酸ガスが低温高圧の環境下で麦汁の液体分子の隙間に緻密に溶け込み、ベルベットのように繊細で持続力のある微細な泡へと昇華します。
この緻密な工程を経るからこそ、ラガーは口に含んだ瞬間に余分な香気や重みが舌に残らず、喉を通過した途端に後味が綺麗に消え去る「抜群のキレ」を獲得します。雑味をごまかすアロマがない分、原料のわずかな瑕疵や設備の微小な汚れがそのまま味の破綻につながるため、醸造家たちの間では「世界で最も誤魔化しが利かない、設備投資と衛生管理の極致を要するスタイル」と評されています。