大手チェーンが相次いでドリンク価格の引き上げに踏み切るなか、「水炊き・焼き鳥 とりいちず」が提示する飲み放題の価格設定は、業界内でも際立った異彩を放っています。なぜ他社が追随できないほどの破格のプライシングを維持できるのか。その背景には、外食ビジネスにおける高度な計算と構造改革が存在します。
第一の理由は、マーケティング戦略における典型的な「ロスリーダー戦略」の徹底です。看板商品の「神泡のザ・プレミアム・モルツ」や単品飲み放題を極めて低い利益率(あるいは単体ではほぼ赤字に近い水準)で提供し、圧倒的な集客力を生み出します。利益はドリンク単体ではなく、名物の「秘伝かわ串」や「水炊き」、各種揚げ物といったフードメニューの出数でトータル回収する設計が敷かれています。
第二に、オペレーションの徹底的なデジタル化と省人化です。全席に導入されたQRコードによるモバイルオーダーシステムにより、ホールスタッフの注文受け業務をほぼ完全にカット。スタッフの動線を料理とドリンクの提供に特化させることで、同業他社の一般的な居酒屋と比較して店舗あたりの人件費比率を数パーセント単位で抑制することに成功しています。
第三に、鶏肉という食材への徹底した集中特化です。鶏ガラを長時間じっくり炊き上げる水炊きスープから、各種部位の串焼き、唐揚げに至るまで、仕入れルートを鶏肉に一本化することで、スケールメリットによる強力なバイイングパワーを発揮しています。食材ロス(廃棄)を極限まで減らし、仕入れ原価を抑え込むサプライチェーンが強固に構築されているからこそ、消費者が驚愕するような低価格を成立させているのです。