古いガムを取り出した際、表面全体が白っぽく変色していたり、白い粉が吹いていたりして「これはカビではないか」と警戒した経験を持つ読者も少なくないはずだ。ここでパニックに陥る前に、「安全な結晶成分」と「危険なカビ」の科学的な鑑別基準を正しく把握しておく必要がある。
多くの場合、板ガムの表面についている白い粉は、製造時にガム同士や内装紙の付着を防ぐために塗布された「打ち粉(コーンスターチやブドウ糖の粉末)」である。また、粒ガムの表面が白く曇っている現象は、コーティング層の糖アルコール(キシリトールやマルチトール)が周囲の湿度変化によって微量に溶解し、再乾燥する過程で白く結晶化したもの(ブルーミング現象)だ。これらは無害であり、毒性物質ではない。
一方で、極めて稀ではあるが保管環境が極度に劣悪だった場合、真菌(カビ)が発生するケースが報告されている。両者の決定的な識別ポイントは以下の通りである。
【糖アルコール・打ち粉の安全な特徴】
・表面全体に均一に薄く広がっている。
・ルーペや至近距離で観察すると、キラキラとした鉱物様の結晶質である。
・指で触るとサラサラとしており、水滴を一滴落とすと速やかに溶けて透明化する。
・臭いは無臭、もしくはわずかなミント臭のみ。
【廃棄すべきカビの危険な兆候】
・斑点状(ポツポツと円形)、または特定の部位だけに固まって発生している。
・綿毛状、菌糸状のフワフワとした立体構造を持っている。
・白だけでなく、微かに緑色、黒色、灰色、黄色などの色素を帯びている。
・ツンとする酸臭、ホコリ臭、古本のような特有のカビ臭・腐敗臭が漂う。
特に注意を払わなければならないのが、「自家用車内のグローブボックスやドアポケット」への放置だ。JAF(日本自動車連盟)の公式テストデータによると、真夏の炎天下における車内ダッシュボード付近の最高温度は約74〜79℃に達する。一般的なチューインガムのガムベースは50〜60℃を超えると流動化を始めるため、車内に放置されたガムは一度ドロドロに融解し、包装紙のアルミニウムやプラスチック被膜の染料・接着剤を巻き込んで冷却固化する。この過程で添加油脂の過酸化反応が猛烈なスピードで進むため、たとえ1〜2年の放置であっても健康被害を招く危険性が跳ね上がるのだ。