2019年4月1日、首相官邸2階の記者会見室には、国内外から100名を超える報道陣がすし詰め状態となっていました。当初、新元号の公表は「午前11時30分頃」と宮内庁および官邸筋からアナウンスされていました。しかし、時計の針が11時30分を過ぎても、菅義偉官房長官は姿を現しませんでした。
テレビの中継席でアナウンサーが緊張気味に時間を繋ぐ中、遅延の理由を巡って様々な憶測が飛び交いました。後に官邸関係者が明かした証言によると、この「11分間のタイムラグ」は、有識者懇談会から衆参両院正副議長への意見聴取、全閣僚会議、そして皇居・御所への言上(上皇さまと天皇陛下への正式な伝達)という一連の法的手続きを、寸分の狂いもなく完全に完了させるための綿密な確認作業によるものでした。情報漏洩を極限まで警戒し、閣僚ですら直前までスマートフォンの所持を禁じられる徹底した情報統制が敷かれていたのです。
午前11時41分、紺のスーツに身を包んだ菅官房長官が入室し、壇上に立ちました。「新しい元号は、『令和』であります」。発声とともに掲げられた額縁。黒々とした力強い運筆で書かれた二文字が白日の下に晒された瞬間、官邸記者クラブには乾いたシャッター音が鳴り響き、日本中の街頭ビジョンやSNSが瞬時に沸騰しました。直後の正午過ぎには安倍晋三首相(当時)が自ら記者会見を開き、新元号に込めた国民へのメッセージを力強く表明したのです。