ネット上の情報空間には、国常立尊に関して「祟り神だから一般人は近づかない方がいい」「参拝すると酷い目に遭う」といった過激な誤解が散見されます。しかし、これらの言説は一次資料の文脈を無視した短絡的な誇張に過ぎません。
第1の誤解は、「国常立尊=悪神・祟り神」という短絡です。神道史における「祟り(タタリ)」の本来の意味は、「立ち現れ(タチアラワレ)」であり、神の威力や自然の法則が顕在化することを指します。国常立尊が厳格であるとされるのは、私利私欲による不正や不自然な生き方に対して容赦なく是正のブレーキをかけるからであり、罪のない人間に無差別に災いをもたらすような悪意の存在ではありません。
第2の誤解は、「スピリチュアルな奇跡で一発逆転させてくれる魔法の神」という期待です。SNS等で見られる「参拝したら臨時収入が入った」「奇跡的に仕事が決まった」といった体験談に惹かれ、他力本願の神頼みで訪れる人が後を絶ちません。しかし、国常立尊が司るのは「大地の恒久的な規律」です。自身の怠惰を棚上げにし、現実の努力を放棄したまま都合の良い奇跡を乞う姿勢に対しては、むしろその甘えを打ち砕くような厳しい試練(現実直視の契機)として作用することが多いため、それが「怖い神」という風評被害につながっているのです。