漫画原作(作・久住昌之、画・谷口ジロー)における井之頭五郎と、ドラマ版で松重豊が演じる五郎には、実は少なくないキャラクター造形の乖離が存在します。この乖離こそが、初期のキャスティングにおける試行錯誤と、のちに囁かれることになる後任候補の選定基準に大きな影響を与えています。
原作の五郎は、古武道(関節技)の心得を持ち、体格は筋骨隆々で無骨、時には理不尽な飲食店主に容赦ない制裁を加えるようなハードボイルドな男性として描かれていました。そのため、テレビドラマ化の企画が立ち上がった当初、制作陣や原作者の間で主役の初代候補として有力視されていたのは長嶋一茂でした。大柄でスポーツマン体型、どこかマイペースで飄々とした雰囲気が原作の五郎のパブリックイメージに合致していたためです。
結果として松重豊への白羽の矢が立ち、そのスリムな長身と端正なスーツ姿から繰り出される「圧倒的な食べっぷり」のコントラストが視聴者を惹きつけました。もし後任を選ぶとすれば誰かというネット上の議論では、大泉洋のような愛嬌のある語り口を持つ人物や、角田晃広(東京03)のように哀愁を帯びた日常芝居を得意とするバイプレーヤーの名前が挙がりますが、松重が築き上げた「孤高の美学」をそのまま引き継ぐことの難しさをこの比較データが物語っています。