1988年、フォーミュラ1(F1)の歴史が塗り替えられた。マクラーレン・レーシングと本田技研工業(ホンダ)が手を組んだ瞬間、ライバルたちの希望は脆くも打ち砕かれたのだ。アイルトン・セナと名車マクラーレン・ホンダ MP4/4が達成したシーズン16戦中15勝という圧倒的な金字塔は、偶然の産物ではない。
栃木の研究所から送り出される1.5リッターV6ツインターボエンジン「RA168E」。そのポテンシャルを絞り出すため、セナは極限までスロットルを煽り続けた。「もっとパワーを。コーナーの立ち上がりでミリ秒単位のレスポンスが欲しい」。深夜まで及ぶミーティングで、エンジニアたちはセナの要求に圧倒されながらも、その情熱に共鳴していった。数字のテレメトリーデータ以上に、ドライバーの肉感的なフィードバックを信じて改良を重ねた泥臭い職人魂こそが、無敵の強さを生み出した真実である。