久留米の焼き鳥を語る上で、避けて通れない金字塔が「ダルム」だ。豚の白モツをカリッと香ばしく焼き上げたもので、噛みしめるほどに凝縮された脂の旨味がじわりと広がる。だが、なぜドイツ語の名がついているのか。
ルーツは昭和の時代、久留米大学医学部の学生たちが酒場で飛び交わせたドイツ語の医学用語にある。腸を「Darm(ダルム)」、心臓を「Herz(ヘルツ)」、肝臓を「Leber(レバー)」、大動脈を「Senpoko(センポコ)」と注文したのが始まりだ。難解な医学用語を符丁のように使って酒を酌み交わした若きエリートたちの遊び心が、いつしか店側の標準メニューとして定着した。ご当地B級グルメと呼ばれる料理は数あれど、医学の街という地域性と呑兵衛の機転がこれほど見事に融合した例は他にない。