オカルト的な憶測を排し、学術的な民俗学のメスを入れると、さらに根源的な古代信仰の姿が露わになる。日本民俗学会の礎を築いた柳田國男やその愛弟子である折口信夫らの研究によれば、わらべうたの多くは古代の呪術的儀礼や神事の残滓(ざんし)であるとされる。
目隠しをして中央に座る「鬼」の役割は、神託を受け取る巫女(依り代)そのものだ。子どもたちが周囲を輪になって回る行為は、神霊を特定の空間に降臨させるための旋回舞踊に他ならない。「後ろの正面」とは、目に見えない異界から背後に降り立った神、あるいは霊的存在を指している。かつて共同体において、神隠しに遭った子どもの行方を占う儀式や、死者との交信を試みる呪術が、時を経て子どもの遊びへと世俗化した。柳田らが指摘した通り、童謡とは失われた神話の断片が偶然生き残ったタイムカプセルなのだ。