園川のキャリアの中で最大のハイライトの一つとなったのが、1996年シーズン開幕戦での抜擢劇です。前年2位に躍進しながらもボビー・バレンタイン監督が退任し、江尻亮監督が就任したこの年、開幕投手の大本命はエースの伊良部秀輝や小宮山悟、あるいは左腕のエリック・ヒルマンと目されていました。
しかし、首脳陣が開幕投手に指名したのはプロ11年目のベテラン・園川一美でした。なぜ伊良部でも小宮山でもなく園川だったのか。その理由は極めて戦術的な計算に基づいたものでした。
- 対ダイエー打線への圧倒的相性:開幕戦の相手である福岡ダイエーホークスに対し、園川は無類の強さを誇っていたこと。
- 裏ローテの安定化:エース格の伊良部や小宮山を続く西武・近鉄戦などの強豪カードにぶつける戦略的ローテーション再編。
- ベテランの精神的安定感:開幕独特の異様なプレッシャーを飄々と受け止め、淡々と試合を作れる経験値。
この抜擢を受け、テレビ朝日の報道番組『ニュースステーション』のメインキャスターだった久米宏氏が番組内で「開幕投手が園川? ロッテは今年、優勝を諦めたんでしょうか」という趣旨の発言をしたことで事態は急変します。この発言に千葉ロッテファンおよび球団関係者が猛反発し、テレビ局へ抗議が殺到しました。
迎えた開幕戦、園川は見事な好投を披露してチームを勝利に導きます。その後、久米宏氏は番組内で自身の非礼を全面的に謝罪し、園川の背番号「27」のユニフォームを着用して生放送を進行するという異例の和解劇へと発展しました。マスコミの軽薄な論評をグラウンド上の結果で見事に覆したこの出来事は、園川の不屈のメンタリティを象徴する名場面です。