家全体の空間設計において、住設機器の選定はライフスタイルそのものを映し出す鏡といえます。いま多くの施主が和の情緒を感じさせる設えを選ぶ背景には、単なるインテリアの流行にとどまらない、より根深い心理的動機が存在しています。
和モダンキッチン人気の理由として第一に挙げられるのが、過度なデジタル化やミニマリズムが生んだ空間の「冷たさ」に対する揺り戻しです。白やグレーの鏡面パネルで囲まれたキッチンは一見スマートですが、生活感を極限まで排除する緊張感を強いる側面がありました。これに対し、スギやヒノキ、タモなどの木目、珪藻土や和紙、黒漆を想起させるテクスチャーを取り入れた空間は、視覚と触覚に優しさと寛ぎをもたらします。
家族社会学の観点からも、対面式のキッチンカウンター和風仕立ては、割烹のカウンター越しに板前と客が自然に対話するような親密な距離感を生み出す効果が指摘されています。調理する人と食卓を囲む人の間に心地よい心理的バウンダリー(境界線)を保ちながら、温かなコミュニケーションを両立させる装置として、和のデザイン思想が再評価されているのです。