参加者を死の恐怖で操り、裏からゲームをコントロールしていたハートのジャックの正体は、松下遊馬でした。
松下は当初、眼鏡をかけた気弱で大人しい青年として振る舞い、リーダーシップを取る強者や狡猾なグループの影に隠れて「守られる側の弱者」を巧みに演じていました。しかしその実態は、他人の認知を自在に歪めるプロの催眠療法士(セラピスト)であり、他者の命を弄ぶことに悦びを感じる冷酷な絵札の主でした。
松下は持ち前の心理誘導術を駆使し、親しくなったプレイヤーに対して無意識の暗示をかけていました。「相手に信じ込ませたいマーク」を言葉の端々や視線の誘導によって植え付け、確信を持って誤った回答をさせることで、手を下さずに次々と参加者を脱落させていったのです。誰からも疑われない安全圏にいながら、他人が疑心暗鬼に陥って自滅していく様を高みの見物で楽しむ――これこそが松下の仕掛けたマークのトリックの本質でした。