鉄道各社が損害賠償を請求する法的な足がかりは、民法第709条に規定される「不法行為に基づく損害賠償責任」にあります。故意(自死目的など)または過失(線路への不注意な立ち入りや泥酔による転落)によって列車の運行を妨害し、鉄道事業者に経済的打撃を与えたことに対する填補請求です。これが鉄道会社からの請求理由の中核を成します。
請求額の内訳は、感情的なペナルティではなく、綿密な営業損害・実費支出の積算によって構築されます。その主たる費目となるのが振替輸送費用と遅延損害金です。都市部では事故発生時、他社路線へ乗客を誘導する「振替輸送」が発動されますが、この代行費用は事故原因を作った側の事業者が後日精算して他社へ支払うシステムとなっており、乗降人数の多い路線ほど莫大な費用が発生します。
乗客が目的地に遅刻したことによる個々の間接的な逸失利益(商談の破談、飛行機の乗り遅れ等)については、因果関係が遠すぎるため法的に鉄道会社へ賠償請求できず、結果として事故当事者への請求内訳にも含まれません。鉄道会社が積算するのはあくまで「自社が被った直接的な損害」に厳格に限定されています。