金曜日の19時。店内に足を踏み入れると、緊張感漂う静寂……ではなく、爆笑の渦が巻いていた。
「おい、メニュー表そこにあるだろ。自分で取れよ」
金髪のスタッフがだるそうに指差す。客の女子大学生2人組は「すみません!」と言いながら、嬉しそうにスマートフォンを掲げてそのやり取りを動画に収めていた。料理が運ばれてくると、皿は卓上にトンと音を立てて力強く置かれる。「残したら罰金だからな」と冷ややかに言い残し、スタッフは背を向けた。
不快感どころか、店内には終始アトラクションに乗っているかのような歓声が響く。ここで行われているのは「接客放棄」ではない。緻密に計算された「ツンデレ演出」であり、高度な対話型エンターテインメントなのだ。
会計時には一転して「ありがとね、気をつけて帰りな」と見せる不器用な笑顔。この絶妙なギャップにノックアウトされたリピーターが、連日長蛇の列を作っている。