汁用せんべいは、地元八戸では古くから「かやき煎餅」や「おつゆせんべい」と呼ばれ、おやつとして食べる南部煎餅とは原料設計から製造工程まで明確に区別されています。
最大の違いは「生地の密度」と「副原料の有無」にあります。通常のお菓子として親しまれている南部煎餅(白煎餅や胡麻煎餅、落花生煎餅)は、サクサクとした軽快な歯ごたえを生み出すために重曹などの膨張剤を微量に使用したり、油脂分や糖分を加えたりして気泡を含ませて焼き上げます。これをそのまま熱湯に入れると、気泡から一気に水分が浸透してわずか数分で形を失い、汁全体が糊のように濁ってしまいます。
対照的に、せんべい汁用の煎餅は「小麦粉、水、塩」という極めてシンプルな原料のみを使い、膨張剤を一切使わずに専用の鉄型で強い圧力をかけて焼き締めます。極限まで気泡を排除し、グルテンの網目構造を強固に形成しているため、熱いスープの中でも急激に水分を吸いすぎず、外側はふっくら、芯には心地よい弾力を残す奇跡の食感を実現できるのです。