二人の接点が生まれたのは、室井滋さんが女優として頭角を現し始めた1980年代半ばから後半にかけての時期です。当時、長谷川和彦監督は相米慎二監督や黒沢清監督ら気鋭の映画人たちと共に映画製作会社「ディレクターズ・カンパニー」を立ち上げ、日本映画界の台風の目となっていました。
早稲田大学在学中から演劇活動に打ち込み、自主映画や個性的な役柄で業界内の注目を集めていた室井さんは、映画関係者の集まる場を通じて長谷川監督と知り合います。圧倒的な熱量と破天荒なカリスマ性を持つ長谷川監督と、鋭い知性と表現への情熱を秘めた室井さんが惹かれ合うまでに、長い時間はかかりませんでした。
当時のインタビューや関係者の証言によると、二人の関係は単なる恋愛感情にとどまらず、「表現者同士の魂のぶつかり合い」から始まったとされています。映画への妥協を一切許さない鬼才監督と、独自の演技論を切り拓く実力派女優。お互いの才能に対する絶対的なリスペクトが、その後の半生を共にする基盤となりました。