世界最高峰のイングリッシュローズ育種元である英デビッド・オースチン・ロージズ社が下した「カタログ落ち(生産終了・廃盤)」の決定は、多くの愛好家にとって青天の霹靂でした。しかし、同社の近年の育種方針や欧州の園芸規制を紐解くと、そこには明確な構造的理由が存在します。
最大の決定打となったのは、近年の世界的な環境規制と「耐病性基準の抜本的な引き上げ」です。欧州を中心に家庭園芸用化学農薬の使用規制が年々厳格化する中、オースチン社は「誰もが農薬を使わずに育てられる強健なバラ」へと主力ラインナップの世代交代を一気に加速させました。レディ エマ ハミルトンは発表当時の基準では優れた耐病性を誇っていましたが、近年生み出された「ロアルド・ダール」や「ナイチンゲール」といった最新世代と比較した場合、特に黒星病(黒点病)に対する耐性面で現行の厳格な自社基準を満たさなくなったと判断されたのです。
さらに、育成者権(品種登録パテント)の期間満了に伴うブランドポートフォリオの刷新というビジネス戦略も重なりました。決して「品種としての魅力が衰えた」からではなく、オースチン社が掲げる「次世代の持続可能なバラ」という未来像へのシフトに伴う必然的な勇退劇であったと言えます。