街中の大型施設や鉄道駅で長年親しまれてきた「多目的トイレ」や「だれでもトイレ」という呼称。一見すると親切で包摂的に思えるこのネーミングが、皮肉にも深刻な利用障壁を生み出していました。バリアフリートイレ名称変更の理由は、まさにこの「誰でも使える」という曖昧さが引き起こした利用者の集中にあります。
車椅子を使用する方や内部障害を持つ方にとって、専用の設備を備えたトイレは外出先での命綱とも呼べる存在です。しかし、「誰でも」と明記されたことで、着替え、メイク直し、長電話、あるいは単に広い空間を好む一般利用者が個室を長時間占有するケースが頻発しました。その結果、30分以上待たされて体調を崩す当事者が続出するなど、だれでもトイレ見直しの経緯には当事者団体からの切実な訴えがありました。
そこで国は方針を転換し、利用対象をあいまいにしない「車椅子使用者用トイレ」「オストメイト対応トイレ」といった機能別の個別表記を徹底するよう自治体や施設管理者へ要請。従来の「多機能トイレ」という総称自体も見直され、適切な利用者を導く明確なサインへの置き換えが進んでいます。