ファンデーションを塗った直後は隠せているように見えても、時間が経つと皮脂と混ざり合って赤黒く浮き上がってしまう現象に悩まされる人は少なくありません。この「メイクで隠しきれない赤み」の正体は、表皮の単なる色むらではなく、真皮層を走る毛細血管が透けて見えている状態にあります。特に鼻周辺は顔の中でも血流が豊富であり、皮膚が薄いため、血管の拡張がダイレクトに視覚化されやすい解剖学的特徴を持っています。
鼻の赤みを引き起こす二大巨頭として知られるのが、毛細血管拡張症と酒さ(しゅさ)です。両者は混同されがちですが、病態と進行プロセスには明確な境界線が存在します。
まず、毛細血管拡張症は、何らかの刺激や体質によって真皮の毛細血管が拡張し、自律神経による収縮力を失って血液が滞留する状態を指します。皮膚の表面に細い糸くずのような血管が樹枝状に透けて見える「血管拡張型」が特徴で、皮膚そのものに強いブツブツや膿を伴わないケースが目立ちます。小鼻のキワや鼻頭に局所的に現れやすいのが特徴です。
一方、酒さは慢性的な炎症性疾患であり、単なる血管拡張にとどまりません。初期(第1期:紅斑期)は寒暖差や飲酒、緊張などで鼻や頬が一時的に赤くなる「フラッシング」から始まりますが、進行すると赤みが持続化し、第2期(丘疹・膿疱期)ではニキビに酷似した赤いブツブツが多発します。さらに放置して重症化すると、第3期(鼻瘤:びりゅう)へと移行し、皮脂腺の異常増殖によって鼻の組織そのものがゴツゴツと肥厚してしまうリスクを孕んでいます。
日々の診察現場のデータにおいても、鼻の赤みを訴えて来院する患者の多くが、初期の酒さや毛細血管拡張症を「頑固なニキビ」「肌質の問題」と誤認し、刺激の強いスキンケアを続けたことで血管の拡張を固定化させてしまっている実態が浮き彫りになっています。赤みを消すための第一歩は、皮膚の表面ではなく「血管そのもの」にアプローチが必要な状態であると正しく認識することにあります。