松田聖子という不世出のスーパースターと、名優・神田正輝の間に生まれた神田沙也加。その出自は、彼女にとって最大の誇りであると同時に、若き日には決して逃れられない重圧でもあった。ソニー・ミュージックレコーズから「SAYAKA」として鮮烈なデビューを飾った当時、世間の視線はどうしても「大スターの娘」という色眼鏡に囚われがちだった。
しかし、彼女は安易なJ-POPのヒット街道に安住しなかった。自らの足でオーディションを受け、声楽や演技の基礎を徹底的に叩き込み直す道を選んだのだ。母譲りの伸びやかな高音に、独自の繊細な感情表現を加えた歌声。神田沙也加は、血筋という看板を脱ぎ捨て、表現者・実力派シンガーとしての地位をゼロから勝ち取っていった。