胸の中央が痛むものの、締め付け感ではなく「チクチク」「ズキズキ」とした表層的な痛みや、指で「押すと痛い」という訴えも外来診療では頻繁に見られます。このパターンでは、心臓血管系以外の器官が原因となっているケースが大多数を占めます。
代表格が逆流性食道炎です。胃酸が食道へ逆流することで食道粘膜に炎症が起き、胸骨の直下あたりに灼熱感やしみるような痛みを引き起こします。食道と心臓は同じ自律神経ネットワークを共有しているため、逆流性食道炎による食道痙攣が狭心症と酷似した胸痛を引き起こす「非心臓性胸痛(NCCP)」の主要因として知られています。前屈みになったときや就寝時に痛みが強まり、制酸剤の服用で和らぐ点が鑑別のポイントです。
一方、「胸の真ん中あたりを指で押すとピンポイントで痛む」「体を捻ったり深呼吸をしたりするとズキッと痛む」場合は、肋間神経痛や胸肋関節炎(ティーツェ症候群)が疑われます。肋骨と胸骨をつなぐ軟骨部分の微小な炎症や、長時間のデスクワーク・スマートフォンの操作による猫背姿勢が神経を圧迫して発症します。帯状疱疹の初期段階で皮疹が出る前にズキズキとした神経痛が先行することもあるため、皮膚の状態にも注視が必要です。