警察署の奥深くに存在する留置施設は、一般の市民生活から完全に隔絶されています。携帯電話や私物はすべて領置(預かり保管)され、所内の生活は「留置施設業務心得」などの規程に基づき、秒単位の厳格な規律で統制されます。
収容者の朝は早く、起床時刻は午前6時30分から7時00分頃に設定されています。起床後は直ちに布団を畳んで整頓し、点呼(人員確認)を受けます。居室は一般的に3〜6人程度の雑居房、あるいは単独房(独居)に分かれており、室内には畳敷きのスペースと、外から目視確認できるよう低めの仕切りが設けられたトイレ・洗面台が設置されています。
食事は「官本(かんぽん)」と呼ばれる官給食が1日3食支給されます。白米と麦を混ぜたご飯に、煮物や揚げ物、パック入りの総菜、味噌汁などが配膳されます。味付けは栄養計算されているものの淡泊で、汁物が冷めていることも珍しくありません。自前のお金(領置金)がある場合は、外部の指定業者からパンや缶詰、お菓子、飲料などを購入する「自弁(じべん)」制度を利用できますが、注文できる品目や個数には細かな制限があります。
入浴の頻度は季節によって異なり、夏期は週3回程度、冬期は週2回程度、1回あたり15分〜20分程度の短時間で済ませなければなりません。入浴のない日は洗面台での洗顔や濡れタオルによる身体の清拭のみです。日中は連日の警察・検察による取調べ、あるいは弁護士との接見で過ごし、取調べのない時間は居室で読書をするか、静座して待機します。私語は厳しく制限され、夜間は午後9時頃に就寝(消灯)となりますが、防犯および自傷事故防止のため室内灯が完全に消えることはなく、薄明かりの中で監視カメラと巡回員に常時監視されながら眠りにつくことになります。
元収容者の手記や弁護士の接見記録によると、「もっとも精神を削られるのは、窓の外の景色が見えず、外部の情報から完全に遮断される孤独感と、夜間も薄暗い照明が灯り続ける不眠のストレスである」と一様に語られています。