校正の現場やニュースデスクが最も神経を尖らせるのが、「間違いやすい慣用句と誤用例の真相」です。言葉の響きや現代的な感覚から、本来の意味とは正反対、あるいは全く別の意味で社会に定着してしまう現象が後を絶ちません。
文化庁「国語に関する世論調査」の継続的な調査報告書を紐解くと、驚くべき数字が記録されています。
なぜここまで誤用が広がるのでしょうか。例えば「役不足」は、謙譲語として自分をへりくだるつもりで「私のような若輩者には役不足ですが……」と挨拶してしまう人が大勢います。しかし本来の意味に照らせば、「この役職は私の実力に対して軽すぎて不満だ」という極めて傲慢な宣言になってしまいます。正しくは「力不足」を使わなければなりません。
また「敷居が高い」も、「高級フレンチの店は敷居が高い」という使い方は本来誤りで、敷居をまたぐ際に「以前借金を返していない」「迷惑をかけた」という後ろめたさがある場合にのみ用いる言葉でした。言葉が語源から切り離され、語感のイメージ(高くて跨ぎにくいハードル)に引きずられて意味が変容していく現代の日本語のリアルがここにあります。