事実無根であるにもかかわらず、なぜこの「デマの真相と理由」は長年にわたり検索され続けたのでしょうか。ネット上の言説空間とSNSユーザーの心理を分析すると、3つの要素が複雑に絡み合っていることが分かります。
第1に、Yahoo!知恵袋やまとめサイトによる相互参照ループです。誰かが「寺西拓人くんのお父さんって氷室京介なんですか?」と書き込み、それに対して「苗字が寺西修だから可能性はあるかも」「雰囲気が似ている」といった推測ベースの回答が付く。それを閲覧した個人ブログやまとめアフィリエイトサイトが「氷室京介の息子はジャニーズの寺西拓人?」という見出しで記事化し、検索エンジンにインデックスされることで、真偽の確認されない情報が定着していきました。
第2に、寺西拓人の持つ特異な存在感と実力です。ジャニーズJr.時代からダンスや歌唱力、演技力において同世代の中でも群を抜く評価を得ていた寺西拓人に対し、一部のファンや観察者が「これほどの表現力を持つ青年なら、親が超一流の表現者であっても不思議ではない」という無意識のバイアスを投影しました。「偉大なロックスターの息子が、身元を隠してジャニーズで下積みを経て実力派俳優になった」というストーリーは、大衆の好奇心を刺激するフィクションとしてあまりにも魅力的だったのです。
第3に、氷室京介自身の鉄壁のプライベート管理が挙げられます。徹底して家庭の姿を表に出さず、神秘的なロックスター像を貫き通しているがゆえに、大衆側の「知りたい」という欲望に空白が生まれます。その情報の空白地帯に、寺西拓人という実在のスターが都合よくパズルのピースとしてはめ込まれてしまったと言えます。