本殿の脇に聳え立つ巨木がある。「富士太郎杉」だ。樹齢は1000年を超え、幹周りは9メートルにも達する。見上げる者を圧倒する根元には、神木としての静かな生命力が脈打つ。隣接する「富士次郎杉」とともに、何世代もの人間を見守り続けてきた。
社殿の起源は古い。日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の折、富士の神霊を遥拝した地に祠を建てたのが始まりと伝わる。現在の本殿は1615年に鳥居成次によって建立されたもので、東宮本殿や西宮本殿とともに国の重要文化財だ。朱塗りの鮮やかさと緻密な木彫、長年の風雪に耐えた建造物の重厚さ。建築の一つひとつが、巨大な自然に対する人間の敬畏を今に伝えている。