音楽の領域を越え、日本社会に大きな議論を巻き起こしたのが、2013年に公開された太田隆文監督の劇映画『朝日のあたる家』です。本作は、東日本大震災における福島第一原発事故の記憶が生々しい時期に、静岡県の原発至近の町を舞台として製作されました。
【主要キャストと配役】
- 並樹史朗:主人公の父親・平谷良太郎役(農家として実直に生きる一家の柱)
- 斉藤とも子:母親・平谷陽子役(家庭を支える温厚な母)
- 平沢いずみ:長女・平谷あかね役(未来に夢を抱く高校生)
- 橋本一郎:長男・平谷健二役
- 山本太郎:叔父・坂本役(事故の危険性を早くから訴えていた親族)
- 藤田朋子:近隣住民役
物語のあらすじは、緑豊かな地方都市で平穏に暮らしていた平谷一家が、突如発生した原子力発電所の重大事故によって日常を一瞬で奪われるというものです。放射性物質の拡散に伴い避難指示が出され、家財も農業用の土地も捨てて避難所生活を余儀なくされます。避難先での偏見や差別、家族の健康被害への不安、そして一家の離散という過酷な現実が容赦なく描かれます。
本作が公開当時から異例の扱いを受けた理由は、「大手シネマコンプレックスでの上映見送り」という興行界の自主規制問題に直面したためです。福島原発事故直後の極めてセンシティブな政治的テーマを扱っていたことから、全国ロードショー規模の劇場公開が難航。しかし、これに反発した市民有志や映画ファンによる「自主上映運動」が全国各地で立ち上がり、公民館やミニシアターでの口コミ上映が長期間にわたって展開されました。
タイトルの「朝日のあたる家」とは、かつて一家が笑い合って暮らしていた「日当たりの良いマイホーム」を指すと同時に、二度と立ち入ることのできない「放射能に汚染された見果てぬ故郷」を意味しています。名曲が内包する「一度足を踏み入れたら二度と元の人生には戻れない」という破滅の構造が、原発事故の残酷さと見事に重ね合わされています。