埼玉県内に点在する「蝦夷」の屋号を語る上で欠かせないのが、暖簾分けによって独自の進化を遂げた系列店の存在である。北海ラーメン蝦夷本店から派生した店舗群は、基本の味付けや大盛り精神を共有しながらも、店主ごとの個性が鮮明に打ち出されている。
メディアで最もセンセーショナルに取り上げられるのが、埼玉県川越市小堤に拠点を置く「二代目蝦夷」である。元プロボクサーの経歴を持つ店主が切り盛りするこの店舗は、二代目蝦夷デカ盛りの名を轟かせ、全国のフードファイターや大食いインフルエンサーの登竜門となっている。すり鉢に盛られた数キロ単位のチャーシュー丼や、唐揚げがタワーのようにそびえ立つ「から揚げトリプル定食」など、胃袋の限界に挑むチャレンジングなメニューが目白押しだ。店主の豪放磊落な人柄と、格闘技仕込みのストイックな調理風景は、大食いファンを惹きつけてやまない。
一方、坂戸市にっさい花みず木に店を構える「三代目蝦夷」は、技術に裏打ちされた中華メニューの完成度の高さで名を馳せる。とりわけファンの間で神格化されているのが三代目蝦夷チャーハンである。強烈な火力で一気に炒め上げられた米粒は、外側が香ばしくパラパラでありながら、内部にはふっくらとした水分とラードの旨味が閉じ込められている。チャーハン目当てに遠方から通い詰めるリピーターも多く、二代目の破壊的な物量路線とは一線を画す、洗練された大衆中華の極致を体感できる。