キメラアント編のクライマックスにおいて、コムギの命運を決定づけたのはネテロ会長が体内に仕込んでいた小型核兵器「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」でした。爆炎を生き延びたメルエムでしたが、薔薇に含まれていた遅効性・伝染性の猛毒によって細胞を蝕まれ、余命いくばくもない状態に陥ります。
記憶を取り戻したメルエムが最期に望んだのは、世界征服でも復讐でもなく、「コムギともう一度軍儀を打つこと」でした。地下の漆黒の暗闇の中で行われた最後の対局。メルエムは自分が毒に侵されており、近くにいればコムギも確実に感染して命を落とす事実を包み隠さず告げます。それに対するコムギの返答は、作中屈指の名言として語り継がれています。
「わだすは……きっと この日のために生まれて来ますた……!」
光を失った真っ暗な世界で、互いの手を握り締めながら息絶えた二人。暗転した黒塗りのページに交わされる会話のテキストだけで表現されたこのラストシーンは、漫画表現の歴史に残る金字塔となりました。
一部のネット上では「コムギは念能力で生き延びたのではないか」「毒の抗体を持っていたのではないか」という生存説が囁かれた時期もありました。しかし、以下の決定的な証拠により、生存説は完全に否定されています。
- 毒の圧倒的殺傷力:プフやユピーといった圧倒的な生命力を持つキメラアントの護衛軍ですら数時間で吐血し死亡しており、常人であるコムギが生き残る生物学的余地はないこと。
- 原作318話の直接的描写:対局場となった地下室で、手を重ね合わせたメルエムとコムギの亡骸が静かに横たわる見開きカットが描かれていること。
- テーマ性の完結:二人が命を終えることで初めて「人間としての生」と「キメラアントの生」が対等に融解するという物語のテーマが成立するため、生存は作品の根幹を損なうこと。
テレビアニメ版(2011年版)でコムギを演じた声優・遠藤綾氏の迫真の演技も、この結末を語る上で欠かせません。鼻にかかった特徴的な訛りから、徐々に意識が混濁し、王への深い愛慕を滲ませながら事切れるまでの声のグラデーションは、国内外のアニメファンに大きな衝撃を与えました。