居酒屋の現場を歩くと、メニュー表記には明確な地域性と店舗ごとのこだわりが存在します。
東西の酒文化を比較すると、関東圏では「レモンサワー」「グレープフルーツサワー」のように「サワー」という呼称が圧倒的に定着しています。これには前述の通り、東京の割材メーカーによる積極的なマーケティングが寄与しています。対して関西圏では、同じ仕様のドリンクであっても「レモンチューハイ」「ライムチューハイ」と表記される頻度が高く、昭和期からの愛称であるチューハイが根強く支持されてきました。
さらに、個人経営の居酒屋や老舗の大衆酒場では、明確な差別化を図っているケースも見受けられます。
- チューハイと注文した場合:「甲類焼酎+炭酸水」のいわゆるプレーンな焼酎ハイボール(甘みなし、レモンなし、またはレモンスライス1枚程度)が供される。
- サワーと注文した場合:「焼酎またはウォッカ+果汁シロップや生搾り果汁+炭酸水」のフルーティーで酸味のあるドリンクが供される。
「居酒屋でプレーンな焼酎の味を楽しみたいときはチューハイ、レモンやすだちなど果実感を楽しみたいときはサワーを頼む」という注文の使い分けは、酒場通の間で自然と共有されている暗黙のルールです。