多くの観客が息を呑んだクライマックスの告白において、怪盗DXの正体は見習い学芸員のクルト・ハルトマンであることが判明します。館長をはじめ周囲からは「何をやっても失敗ばかりの落ちこぼれ」と見なされていたクルトが、なぜ世間を騒がす大怪盗として暗躍しなければならなかったのか。その背後には、博物館の歴史に埋もれた悲哀に満ちた過去が存在していました。
かつて博物館の動力を生み出す画期的な金属「フルメタル」の研究過程で大爆発事故を起こし、責任を一身に背負わされて学会を追放されたペッパラー博士。クルトにとってペッパラー博士は、自分の不器用さを笑わず、温かく技術を教えてくれた唯一無二の師匠でした。ペッパラー博士は追放後も地下の隠れ家で研究を続け、当時の事故原因を解決する完全なフルメタルを精製しようとしていました。その実験に不可欠だったのが、かつて博物館の展示品に組み込まれた希少な変異金属チップだったのです。クルトは師匠の名誉を回復し、正しい研究成果を世に証明したいという一途な思いから、自作のパワードスーツを身にまとい怪盗DXとしてチップを回収して回っていました。
では、そもそもなぜドラえもんの鈴がターゲットになったのか。劇中で明かされる真相は、クルトが怪盗DXのスーツと変身装置を自作した際、鈴の内部にプロトタイプの通信チップを誤って混入させてしまったテストミスにありました。クルト自身、ドラえもんの鈴を本物の貴重品と勘違いして回収したのではなく、自分の部品を取り戻すための行動だったのです。
しかし物語の真のハイライトは、ドラえもんが「なぜ代替品の鈴ではダメなのか」という理由にありました。のび太がかつてドブ川に落ちて泥まみれになった鈴を、日が暮れるまで諦めずに探し出してくれた記憶――。ドラえもんにとってその鈴は、ただの猫よけの道具ではなく、のび太と結んだ最初の絆そのものでした。盗難事件というミステリーの枠組みが、最終的に二人の切っても切れない友情の証明へと着地するプロットは、脚本の清水東氏による職人芸的な筆致と言えます。