制動距離における最も危険な物理特性は、「速度に比例するのではなく、速度の2乗に比例して伸びる」という点です。速度が2倍になれば、制動距離は単純計算で4倍に跳ね上がります。
以下は、警察庁の交通安全教本や日本自動車連盟(JAF)の実測データをベースに算出した、乾燥路面および湿潤路面(雨天時)における速度別の停止距離データです。
幹線道路で一般的な時速60キロの停止距離は約44mに達します。これは一般的な路線バス(全長約10.5m)の4台分以上に相当します。住宅街や市街地で前走車が急制動をかけた際、目測で「20mほど離れているから十分」と考えていた場合、追突を回避することは物理的に不可能です。
さらに高速道路での巡航速度である時速100キロの停止距離は、乾燥路面であっても約84m、サッカーフィールドの縦幅に匹敵する距離を要します。速度がわずか20km/h上がるだけで、停止距離は20メートル以上伸びていく現実を直視しなければなりません。