豊島横尾館を訪れた鑑賞者が一様に息を呑む最大の理由は、建物全体が「ひとつの生命体」のように脈動している点にあります。築数十年の古民家を改修して作られたこの空間は、母屋・倉・納屋の3棟で構成され、展示作品を単に陳列する美術館の枠組みを完全に超越しています。
横尾忠則氏が一貫して探求してきたテーマである「生と死」。その哲学を空間へ具現化したのが、建築界で目覚ましい活躍を続ける永山祐子氏の手腕です。古い木造家屋の梁や柱といった歴史の痕跡を残しつつ、現代的な鏡やガラス、鮮烈な極彩色を衝突させることで、過去と現在、彼岸と此岸が交錯する劇的な空間体験が生み出されています。
玄関をくぐると、静寂の中に響く水音や反射する光のグラデーションが感覚を研ぎ澄ませます。鑑賞者は受動的に作品を眺めるのではなく、生と死が隣り合わせになった世界を自らの足で歩き、体感することになるのです。