分厚い木製の扉が開くと、ひんやりとした湿り気のある空気が肌を包む。日本ワインの黎明期から数々の歴史を刻んできた「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」の地下セラーには、一般の観光ルートでは決して立ち入れない貴重なオールドヴィンテージが静かに眠っている。近年、熱心な愛好家向けに解禁された特別ツアーでは、普段は鍵が掛けられたこの熟成庫に足を踏み入れ、現役の醸造スタッフの解説とともに樽出しのサンプルやバックヴィンテージをテイスティングできる至高の時間が用意されるようになった。
一方、甲府盆地を一望する丘陵地に広がる「サントリー登美の丘ワイナリー」でも、テロワールを五感で解剖するプレミアムツアーが話題を呼んでいる。自家ぶどう園の急斜面を登り、富士山を望む絶景ポイントで風と日照を体感したあと、特別テイスティングルームで極少生産のフラッグシップキュヴェを味わう。単なる観光施設ではなく、ワインが生まれる生態系そのものへと旅人を誘う仕掛けが、山梨の旅をより深く、忘れがたいものにしている。