腕を曲げたときに曲がる部分、すなわち肘(ひじ)が上腕と前腕を分かつ物理的かつ解剖学的な絶対の境界線です。日本整形外科学会の解剖指針でも明確に区分されており、肩関節から肘関節までを「上腕」、肘関節から手首の関節(手関節)までを「前腕」と定義しています。普段何気なく曲げ伸ばししている肘関節ですが、その内部は上腕と前腕をシームレスに連動させる極めて精密なヒンジ機構を備えています。
肘関節の構造は、上腕側にある1本の太く頑丈な「上腕骨」と、前腕側を構成する「橈骨(とうこつ)」および「尺骨(しゃっこつ)」の計3本の骨が組み合わさって成り立っています。尺骨の先端にある突起(肘頭)が肘を曲げたときに外側へ突き出るいわゆる「肘の先端」であり、内側のくぼみは「肘窩(ちゅうか)」と呼ばれ、主要な血管や神経の通り道となっています。
解剖学的に最も興味深いのは骨の本数の違いです。上腕は体幹からの大きな力を腕全体へ伝えるため、中心に1本の上腕骨が柱のように通っています。一方、前腕は物を掴んでひねる動作(回内・回外運動)を可能にするため、親指側に位置する橈骨と尺骨が平行に並び、橈骨が尺骨の周囲を交差するように回転する構造を持っています。この構造的差異こそが、上腕と前腕の運動機能における決定的な分かれ目です。