では、料金差にして2,000円〜3,000円近いコストを投じてまで、成田エクスプレスのグリーン車に乗る価値はあるのでしょうか。結論から言えば、「ハードウェアの機能差」ではなく「空間の環境価値(静けさとパーソナルスペース)」にどこまでお金を払えるかで評価が真っ二つに分かれます。
鉄道ファンの間や各種旅行レビューにおいて、E259系のグリーン車は長年「コストパフォーマンスが低い」と評される傾向がありました。その最大の理由は、東海道新幹線や他のJR特急グリーン車で広く見られる「横3列(2+1列)配置」ではなく、「横4列(2+2列)配置」を採用している点です。シートピッチは広いものの、座席の横幅(シート幅)自体は普通車と劇的な差があるわけではなく、隣に他人が座った場合の圧迫感は普通車と大きく変わりません。
しかし、訪日外国人観光客が急増し、空港アクセス鉄道が軒並み大混雑を見せる現在において、グリーン車の価値は再定義されています。普通車指定席は大きなスーツケースを持ったインバウンド客やファミリー層で埋め尽くされ、車内は賑やかで通路まで手荷物が行き交う場面も珍しくありません。対して、高額なグリーン料金が一種の「フィルター」として機能するため、グリーン車内は常に利用率が20%〜40%程度と空席が目立ち、静寂が保たれています。
「隣に誰も座らない確率が極めて高い」「乗客のマナーが落ち着いており、騒音に煩わされない」という環境は、長時間の国際線フライト前後に集中して仕事を片付けたいビジネスパーソンや、移動の疲労を極力抑えたい富裕層にとっては、金額以上の価値を持つことになります。単なる座席の広さではなく、「静寂を買う」という視点を持てるかどうかが満足度を左右する決定打となります。