物語は、大学生である主人公が友人たち数名とともに、地元で心霊スポットとして知られていた山奥の廃鉱山「S銅山」へ肝試し目的で向かうところから始まります。かつて産業で栄えたものの閉山後は完全に放置され、頑丈な鉄柵や警告看板で封鎖されていたその場所は、鬱蒼とした木々に囲まれ昼間でも異様な冷気が漂う空間でした。
主人公たちは軽い好奇心とスリルを求めてフェンスの隙間から敷地内へ侵入。崩落の危険がある坑道の入り口や、荒れ果てた旧選鉱場、朽ち果てた社宅跡などを探索していきます。静まり返った闇の中、懐中電灯の細い光だけを頼りに奥へと進むうち、一行は「本来そこに存在するはずのない音」を耳にします。それは湿った坑道内に微かに響く、ペタペタという素足で歩くような足音と、意味を成さない女のつぶやき声でした。
悪ふざけの誰かだと自分に言い聞かせながらライトを向けた先、真っ暗な坑道の奥に立っていたのは、季節外れの薄汚れた衣服を身にまとい、乱れた長い黒髪の間から異様な眼光を放つ謎の女でした。女は人間離れした骨格の歪みと生気のない肌を持ちながら、こちらをじっと見つめた瞬間、常軌を逸したスピードと甲高い奇声を発しながら四つん這いに近い姿勢で猛追してきたのです。
パニックに陥った一行は悲鳴を上げながら車へ向かって必死に逃走。後方からは凄まじい勢いで瓦礫を蹴散らす音と狂気じみた笑い声が迫ります。間一髪で車内に逃げ込み、激しく揺れる車体を急発進させて廃鉱山を脱出。しかし、ミラー越しに確認した最後の光景には、猛スピードで走り去る車の背後、ヘッドライトの届かない暗闇の林道に立ち尽くし、首を異様な角度に傾けて手を振り続ける女の姿が映っていました。
命からがら生還した主人公たちでしたが、物語の後日談においてさらなる恐怖が明かされます。同行した友人の一人が重い精神的失調をきたして部屋に引きこもり、夜な夜な「あの女が部屋の外の廊下に立っている」と怯え続ける事態へと発展。単なる廃墟での肝試しは、彼らの日常を永続的に侵食する呪縛となって幕を閉じます。