「北の酒場通りには 長い髪の女が似合う」という印象的なフレーズで幕を開ける本作。従来の北国演歌に見られる「未練」「凍える雪」「耐え忍ぶ女」といった暗いモチーフとは明確に一線を画しています。ここになかにし礼の卓越した人間観察と、都会的なダンディズムが息づいています。
登場する女性像は、悲劇のヒロインではなく、少し気まぐれで自立した大人の女性です。「ちょっと惚れっぽいお前」「男ごころをくすぐる」といった表現には、酒場という刹那の空間で交差する男女の小粋な距離感が描かれています。深入りしすぎず、それでいて冷淡ではない絶妙な関係性は、高度経済成長を経て成熟しつつあった1980年代初頭の日本社会の空気感を的確に反映していました。
また、中村泰士によるメロディは8ビートを基調とし、日本人が無意識に心地よさを感じるヨナ抜き音階(日本古来の五音音階)のエッセンスを散りばめながら、洋楽ポップスの疾走感を巧みにブレンドしています。哀愁を帯びた歌詞の風景を明るいビートで運ぶこの構造こそが、聴き手に重さを感じさせず、幾度でもリピートしたくなる普遍的な魅力の源泉です。