多くの読者が最も気にする疑問が、「ブリーチを一切使わずに、あの独特な透明感と青みが手に入るのか」という点でしょう。結論から述べれば、ブルーブラックのブリーチなし施術において透明感を出せるかどうかは、「染める前の髪のアンダートーン(明るさの履歴)」に100%依存します。
過去にカラー履歴があり、現在の髪色が8〜10トーン程度のライトブラウンに退色している状態であれば、ブリーチなしでも十分に深い青みと透け感を表現できます。ベースにある茶色のメラニンが適度に削られているため、濃厚なブルー染料が内部に入り込み、光を受けた際に美しい発色を見せるためです。反対に、一度も染めたことがない「バージン毛(地毛の黒髪・4〜5トーン)」にブリーチなしでブルーブラックを重ねても、青い絵の具を黒い画用紙に塗るようなものであり、室内では「少しツヤのある普通の黒髪」にしか見えません。
そしてもう一つ、ネット上で頻繁に囁かれるブルーブラックが緑になる真相について毛髪色彩学の視点からメスを入れます。色落ちした髪がモスグリーンや濁ったオリーブ色に変色してしまう現象は、染料の劣化ではなく「減法混色(色の足し算)」の物理法則によって引き起こされます。
日本人の髪は、ブリーチや過去のカラーによって明るく抜ける過程で、赤からオレンジ、そして「黄色(イエロー)」へと変化します。この黄色く抜けたアンダーベースの上に純粋なブルー染料だけを乗せると、日々のシャンプーによって青の粒子が徐々に流出した際、毛髪内に残った「青」とベースの「黄」が混ざり合い、「黄色 + 青 = 緑」という化学反応が毛髪表面で露呈してしまうのです。
この失敗を回避するプロの調合技術は極めてシンプルです。緑化を阻止するためには、黄色の補色(反対色)である「バイオレット(紫)」を5〜10%隠し味としてブレンドします。紫がベースの黄色味を瞬時に打ち消してホワイト〜シルバー寄りの無彩色へ補正するため、青が抜けていくプロセスでも緑にならず、美しいシルバーグレーやアッシュベージュへと段階的に色落ちさせることが可能になります。