北極と南極の決定的な違いとは?寒さの差やペンギンがいない理由

北極と南極の決定的な違いとは?寒さの差やペンギンがいない理由

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北極と南極の違いを語るうえで、多くの人が疑問を抱くのが「ホッキョクグマとペンギンの生息地」のねじれです。なぜ北極にはホッキョクグマ(シロクマ)がいてペンギンがおらず、南極にはペンギンがいてホッキョクグマがいないのでしょうか。これは単なる偶然ではなく、数千万年規模の大陸移動と進化の歴史がもたらした必然の結果です。

まず、ホッキョクグマが北極圏にしかいない理由は「陸続きの移動ルート」にあります。ホッキョクグマは今から約15万〜60万年前に、ユーラシア大陸や北アメリカ大陸に生息していたヒグマの祖先から枝分かれして進化しました。北極海は周囲の大陸と近接しており、冬場に海氷が張り詰めれば大陸から歩いて氷上へ進出できます。そのため、北極圏にはホッキョクグマだけでなく、ホッキョクギツネ、トナカイ(カリブー)、ジャコウウシ、ホッキョクウサギといった多種多様な陸上哺乳類が生息しています。

一方、南極大陸は約3,000万年前に超大陸ゴンドワナから完全に切り離され、周囲を荒れ狂う南極海に閉ざされた「絶海の孤島」となりました。陸上を歩くクマやキツネが、冷たく激しい海流を何千キロも泳いで南極大陸にたどり着くことは物理的に不可能です。その結果、南極大陸には陸生の哺乳類が一種も存在しないという極めて特殊な環境が生まれました。驚くべきことに、南極大陸の陸上で一生を過ごす純粋な固有動物として最大の生物は、体長わずか2〜6ミリメートルの「ナンキョクユスリカ」という羽のない小さな昆虫なのです。

では、「なぜ北極にペンギンがいないのか」。約6,000万年前にニュージーランドや南極周辺の南半球で誕生したペンギンの祖先は、空を飛ぶ能力を捨てて水中を泳ぐことに特化した海鳥です。ペンギンは冷たい海流に乗って移動するため、南極大陸だけでなく南米のチリ・ペルー沿岸や南アフリカ、さらには赤道直下のガラパゴス諸島(フンボルト海流という寒流が流れているため)までは北上できました。しかし、そこからさらに北半球の北極海へ渡るには、「赤道周辺の広大な温かい海域(熱帯の海)」という越えられない壁がありました。厚い脂肪と羽毛を持つペンギンにとって、エサが少なく水温の高い熱帯の海を何千キロも泳ぎ切ることは不可能だったのです。

さらに歴史を紐解くと、実はかつて北極圏にも「ペンギンそっくりの鳥」が存在していました。それがチドリ目ウミスズメ科に属する「オオウミガラス(Great Auk)」です。南半球のペンギン(ペンギン目)とは全く別の系統でありながら、北極圏の冷たい海で魚を獲るために空を飛ぶのをやめ、背中が黒くお腹が白いタキシード姿で直立歩行するという、生物学で言う「収斂進化(しゅうれんしんか)」を遂げた鳥でした。

そもそも「ペンギン(Pinguinus)」という名前自体、元々は北極圏にいたオオウミガラスを指す言葉でした。ところが、大航海時代以降にヨーロッパの船乗りたちが羽毛や食肉・油脂を目的に乱獲を重ねた結果、オオウミガラスは1844年にアイスランド沖で最後のつがいが捕殺され、地球上から完全に絶滅してしまいました。その後、南半球の海に進出した船乗りたちが、南極周辺でオオウミガラスにそっくりな鳥を見つけて「ペンギン」と呼ぶようになったのが現在のペンギンの語源です。

北極と南極の生態系の違いは、鳥類や陸上捕食者の関係性にも決定的な差を生んでいます。北極ではホッキョクグマやホッキョクギツネという強力な陸上捕食者が目を光らせているため、もし仮に現在の北極に空を飛べないペンギンを連れて行ったとしても、氷上で無防備に卵を温めるペンギンはたちまち格好の獲物となり、繁殖することはできません。南極のコウテイペンギンやアデリーペンギン、そして氷上で昼寝をするウェッデルアザラシが陸(氷の上)で人間を見ても逃げないのは、「南極の陸上には自分たちを襲う天敵が1頭もいない(天敵は海中のシャチやヒョウアザラシだけ)」という絶対的な安全神話のなかで進化してきたからに他なりません。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。