日銀総裁を退任した後の1975年、佐々木忠は経済同友会代表幹事に就任しました。通常は2期4年程度で交代することが多い同ポストにおいて、彼は異例の10年間(1975年〜1985年)にわたりトップに君臨。「財界総理」と呼ばれた経団連の土光敏夫らとともに、第二次臨時行政調査会(土光臨調)の推進役として行政改革や国鉄・電電公社の民営化を強力に後押ししました。
当時の特番インタビューや自著・手記で語られた「企業は単なる利益追求の場ではなく、社会的な責任と倫理観を持つべきだ」という言葉は、現代のESG経営やサステナビリティの理念を数十年先取りしたものでした。主著である回顧録や経済論考には、官僚的硬直性を嫌い、自由闊達な議論を通じて市場メカニズムの健全化を願った彼の哲学が凝縮されています。
公の場で見せた表情の厳格さの一方で、若手経営者との勉強会ではフランクに意見を求め、失敗を恐れずに挑戦するベンチャー精神を激励し続けた温厚な人柄も語り草となっています。