映像作品の主題歌が作品の枠組みを超えて一人歩きすることは稀にありますが、『欲望の街』はその最たる成功例と言えます。この曲が誕生した1990年代半ば、Vシネマ界は空前の活況を呈していました。その頂点に君臨していたのが『難波金融伝 ミナミの帝王』であり、主演を務める竹内力でした。
制作関係者の回顧録や当時の音楽業界証言によると、作品のスケール拡大に伴い、「単なる任侠調の演歌ではなく、都会の孤独と人間の業を抉り出す本格的なロックバラードが必要だ」という強烈な現場の熱意が存在していました。そこで白羽の矢が立ったのが、甲斐バンドで日本のロックシーンを牽引してきた甲斐よしひろでした。
竹内力の持つ圧倒的な野性味と、甲斐よしひろが紡ぎ出す都会的で叙情詩のようなメロディライン。一見すると対極にある二つの個性が衝突した瞬間、奇跡的なケミストリーが発生しました。レコーディングスタジオで竹内力が見せた魂のテイクは、甲斐よしひろ自身を唸らせるほどの迫力を帯びており、まさに萬田銀次郎という孤高のキャラクターに命を吹き込む運命の楽曲となったのです。