スポーツジムで体重の2倍のバーベルをスクワットで挙上できる選手が、必ずしもコート上で最も高く跳べるわけではありません。この現象の裏には、筋肉の収縮速度と「力発揮率(Rate of Force Development=RFD)」という決定的な生理学的メカニクスが存在します。
垂直跳びの踏み切りにかかる時間は、わずか0.2秒から0.3秒程度です。これに対して、高重量のバーベルスクワットで最大筋力を発揮するには0.4〜0.7秒以上の時間を要します。いくら最大筋力が高くても、一瞬の踏み切り動作の中でその力を出し切る神経系の指令が整っていなければ、余分についた筋肉は単なる「重り」に成り下がってしまいます。
跳躍の瞬間に最も大きなエネルギーを生み出すのは、筋肉そのものというよりも「腱」のバネです。筋肉が素早く引き伸ばされた直後に急激に縮むことで強大なパワーを放つSSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル:伸張・短縮サイクル)こそが、跳躍力の正体です。筋力トレーニングで土台を作ること自体は有益ですが、それを跳躍という爆発的なスピードに変換する専門トレーニングを行わなければ、記録が頭打ちになるのは必然といえます。