ロッツォというキャラクターは、『トイ・ストーリー3』のために突如として生み出されたわけではありません。ピクサーのアーカイブルームに保管された初期資料によると、ロッツォのプロトタイプは1995年の第1作『トイ・ストーリー』の制作段階から既に存在していました。
当時はウッディがもっとシニカルで嫌味なキャラクターとして構想されており、ロッツォはその部屋にいるおもちゃの1体としてスケッチされていました。しかし、1990年代半ばの3DCG技術では、テディベア特有の「柔らかく密集したリアルな毛並み(ファー)」を自然にレンダリングすることが計算能力的に不可能だったのです。この技術的ハードルは、2001年の『モンスターズ・インク』でサリーの体毛表現を可能にした内製ソフトウェア「Fizz」の開発を経てようやく克服され、15年越しに『トイ・ストーリー3』のメインヴィランとして結実しました。
さらに、2009年公開の『カールじいさんの空飛ぶ家』において、カールじいさんの家が空へと飛び立つシーンで一瞬だけ映る少女の部屋のベッド脇に、ピンクのロッツォのぬいぐるみがカメオ出演していることはコアなファンの間では有名な事実です。ピクサーが何年も前から入念に彼の登場を準備していた証拠と言えます。
また、「なぜイチゴの匂いがするのか」という設定にも演出上の企みがあります。ピクサーの監督リー・アンクリッチらは、画面から甘美で無害な香りを想起させることで、ロッツォが本性を現した際の「内面の腐敗と腐臭」を心理的なコントラストとして際立たせる狙いを持っていました。見た目と香りで油断させ、本質は毒に満ちているという、童話の毒リンゴにも通じる古典的メタファーが組み込まれているのです。