日本口腔外科学会をはじめとする専門機関が一貫して警告している黄金律が、「2週間以上治らない口内炎は専門医に診せる」という原則です。粘膜のターンオーバー(新陳代謝)は全身の中でも非常に早く、単純な潰瘍であれば通常10日前後で上皮が再生します。2週間を経過しても縮小の気配がない、あるいは拡大している病変は、細胞の異形成やがん化を疑うべき客観的なシグナルです。
舌癌の前段階(前がん病変)として特に警戒が必要なのが、粘膜が角化して白くなる「白板症(はくばんしょう)」と、鮮紅色に変色する「紅板症(こうばんしょう)」です。白板症は擦っても剥がれない白い斑点が舌の縁などに現れる病変で、統計的におよそ5〜10%が悪性化します。紅板症はさらに悪性化率が高く、約50%がすでに上皮内がんや浸潤がんを含んでいると報告されています。「舌の横に白い膜のようなものが張り付いている」「赤くただれた斑点が消えない」といった状態は、自覚症状が乏しくても速やかな精密検査が求められます。