この前例のない契約スキームに最も激しく反応したのは、球団ファンではなくカリフォルニア州税務局だった。全米でも指折りの高税率で知られる同州にとって、将来の巨額な税収が州外へ流出する可能性は見過ごせない死活問題となったからだ。
現行の法律では、後払い金の受取時に大谷がカリフォルニア州外、あるいは日本などの国外に居住している場合、同州は所得税を課すことができない可能性がある。6億8000万ドルという途方もない課税対象額をめぐり、州議会では高額所得者の後払い契約に対する課税ルールを見直す法改正の議論が勃発した。ひとりのアスリートの契約構造が、一州の税制や法整備を揺り動かす事態へと発展したのだ。