月を愛の象徴とする文化は、漱石以前の平安時代から脈々と受け継がれてきました。『百人一首』や『古今和歌集』には、月を介して想いを交わす秀歌が数多く残されています。
例えば、「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな(紫式部)」のように、月を恋人や大切な人の姿に見立てる感性は日本人の美意識の根底にあります。
古典的なトーンで返答するなら、「月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ 我が身一つの 秋にはあらねど(大江千里)」を引いて、「あなたと同じ月を見て、同じ想いを抱いています」と仄めかすのも風雅な返し方の一つです。