大相撲本場所日程(15日間)のなかで、力士たちが最も神経をすり減らすのが「8勝7敗(勝ち越し)」と「7勝8敗(負け越し)」の境界線です。
心理学における「損失回避バイアス」が示す通り、人間は「何かを得る喜び」よりも「持っている地位や権利を失う恐怖」に対してより強いストレスを感じます。十両下位(十両11枚目〜14枚目付近)に位置する力士にとって、負け越しは即座に「幕下陥落危機」を意味します。給与が支給される関取の地位から無給の幕下へと転落することは、生活基盤そのものが根底から覆ることを意味するためです。
自著やインタビューで元関取たちが語った手記によれば、「7勝7敗で迎える千秋楽前夜は、プレッシャーで喉を通る食べ物の味がしなくなる」「土俵に上がる際、足の震えを止めるために必死で太ももを叩いた」という生々しい告白が残されています。この極限状態におけるメンタルの維持こそが、勝敗を分ける決定打となります。