前野原温泉 さやの湯処が数多くの温泉ファンを惹きつけてやまない最大の理由は、なんといってもその圧倒的な源泉かけ流しのクオリティにあります。敷地内の地下1,500メートルから汲み上げられる源泉は、空気に触れることで淡いうぐいす色(オリーブグリーン)から茶褐色へと変化する独特のにごり湯です。泉質名は「含ヨウ素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」に分類され、海水に似た塩分と高濃度のヨウ素を含有しています。
この強塩泉は「熱の湯」とも呼ばれ、皮膚に付着した塩分が汗の蒸発を防ぐため、入浴後も驚くほど体が冷めず、芯からポカポカとした温もりが持続します。神経痛や冷え性、疲労回復への効能が期待できる本格的な湯が、都心にいながら加水なしのピュアな状態で注ぎ込まれている光景は、温泉資源が限られる東京において極めて貴重な価値を持っています。
さらに特筆すべきは、昭和40年代に建てられた実業家の個人邸宅を再生したという建築美です。門をくぐると広がる手入れの行き届いた日本庭園や、磨き上げられた無垢の木材が醸し出すノスタルジーは、近隣の近代的な大型温浴施設とは一線を画す静寂と落ち着きを提供しています。