田村正和さんの徹底した美意識と家族観を理解する上で外せないのが、偉大な父・阪東妻三郎の存在だ。サイレント映画時代からちゃんばら時代劇のスターとして日本映画史に名を残し、松竹などの看板を背負った映画王の四男として田村さんは生まれた。兄の田村高廣さん、弟の田村亮さんと共に「田村三兄弟」として名を馳せた血統は、まさに日本の芸能界のサラブレッドそのものである。
父の背中を見て育った兄弟たちは、それぞれ役者としての道を歩みながらも、芸に対する極めて高いプライドを共有していた。伝統的な時代劇から現代劇への転身を果たした田村正和さんだったが、身内を売り物にせず仕事とプライベートを峻別するスタイルは、父から受け継いだ孤高の美学そのものだったと言える。