『ぐりとぐら』を語る上で欠かせないのが、作品を手がけた中川李枝子氏(作)と山脇百合子氏(絵)による細やかな描写です。作中の歌に「ぼくらの なまえは ぐりと ぐら このよで いちばん すきなのは おりょうりすること たべること」とある通り、物語のクライマックスで誕生するのは、森の動物たち全員に振る舞われる特大の「カステラ」です。
しかし、なぜ現代において「ぐりとぐら パン ケーキ」という呼び名が広く定着しているのでしょうか。出版元である福音館書店公式カステラのレシピや当時の解説を紐解くと、作られた時代背景が浮かび上がってきます。1960年代初頭の日本において、カステラは家庭で手軽に焼くものではなく、特別な高級洋菓子でした。絵本の中ではフライパン(鍋)に蓋をして直火で焼き上げるため、現代の感覚から見ると形状や調理法が「極厚のパンケーキ(ホットケーキ)」と重なり、読者の記憶に刻まれたという経緯があります。
ぐりとぐらカステラとパンケーキの違いを製菓科学の観点から整理すると、主に「油脂の量」と「膨張の仕組み」にあります。一般的なパンケーキはベーキングパウダーの化学反応と牛乳・バターの風味でふっくら仕上げるのに対し、伝統的なカステラは卵の力(気泡性)を最大限に活用し、しっとりときめ細やかな組織を作ります。絵本通りの「目の覚めるような黄色」と「きめ細かくほどける食感」を追求するなら、カステラの製法を取り入れたハイブリッドなアプローチが最も近道となります。